わたしたちはあなたのモデルではない :松尾 由紀子

:松尾 由紀子

ごらんの皆さん、はじめまして。
写真を勉強し、写真雑誌などの編集を務めたあと、なぜか好きだったきものの道にはまり込んでます。
今ではきもの好きな人を対象にしたサークル、「きもの倶楽部」の主宰をしています。月に一度きものでお出かけしたりして、とても楽しい集まりなのですが・・・

以前からSNSの『きもの』クラスタ(好きできものを着ている人たち)では、「盗撮」に関する話題が定期的に問題になっています。「勝手に写真撮られた」とか、「撮らないでと言ったら逆ギレされた」とか・・・
撮る立場にもいる身としては「何をそこまでヒステリックに・・・ 」と思っていましたが、それが大げさではないことが実際にあったのです。

2月下旬に都内某所で、毎年町をあげて染色に関するイベントが行われます。そのイベントに倶楽部のお出かけで行ったときのことです。
ちょっと昭和な雰囲気の路地を通りかかった時、カメラマンが4~5人くらい待ち構えていました。きもの姿の一団がそこを通るのを撮ろうとしているのですが、声をかけるでもなく、目であいさつをするでもなく、ただひたすら被写体がいい場所に来るのを待ち構えてる。そのプレッシャーはちょっと気持ち悪かったんですよ・・・
ほかの部員さんは気づいていないようでしたが、気づいたわたしはわざと不機嫌な表情を作ったり、あからさまにレンズに向けて手のひらを突き出したりしてしまいました。
ほかにも狭い路地なのに声もかけずに撮ろうとする人、集合写真を撮っているときにこれまたなにも言わずに一緒に撮っている人もいましたね。

わたしが部活動の記録として部員さんたちを撮るときには、必ず事前に「ブログなどに顔出ししても大丈夫ですか?」と聞いています。中には顔出しNGの人もいますので、そういう場合にはスナップは顔が写らないよう、集合写真はきものの後ろ姿で入っていただくよう配慮しています。
なにも聞かずに撮って勝手に公表した場合は、そのような人の肖像権の侵害にもなるのですよ。

撮りたくなる気持ちはわからないでもないし、なにも「撮るな」とは言いません。でも、最低限の礼儀はあってもいいのではないでしょうか?
声をかけたら自然な表情が撮れなくなるという言い分もあるでしょうが、相手の気分を損ねたらそれこそ本末転倒。
せめて目であいさつ(笑顔でね)、撮ったあとにありがとうの意味も込めて声をかけるとかくらいしてもいいと思うのです。

もし、あなたが街中で鬼気迫る表情で何も言わずにカメラを向けられたら、どんな思いをしますか?
そして、撮られた写真が自分の知らないところで万人のもとに曝されているかもしれない恐怖。
きものが好きでファッションとして楽しんでる人たちは、出かける度にそんな思いをすることが多いのです。

「わたしたちはあなたのモデルではない」

そして、

「あなたたちはわたしのモデルではない」

そのような気持ちを持って、撮影してほしいものです。

被写体に多くを期待し、自分の思い通りに動いてもらいたいなら、プロのモデルを雇ってください。
(まぁ、プロのモデルでもあまり傲慢な態度で撮られるのはいやでしょうね・・・)

今年もそのイベントの開催時期が迫っています。写真教室やサークルなどでの撮影会がたくさん催されるようですが、お互いに気持ちよくイベントに参加できるように願っています。

 

※注:ここでいう「盗撮」とはいわゆる「盗み撮り」のような行為で、撮られる側の同意なく、または撮られる側の意図に反して撮影することを意味しています。

松尾 由紀子 (まつおゆきこ・Yukiko Matsuo ):
写真の勉強をしたにもかかわらず、写真はあくまでも趣味。
写真雑誌や猫雑誌の編集者を経て、今ではフリーで編集の仕事したりなんだり。
もともときものが好きで骨董屋の手伝いをしたりしてしているうちに、なぜか”きもの沼”にどっぷりと浸かる羽目に。
業界関係の集まりにきもので顔を出すと「どこの女将さん? 」、最近は洋服で行くと「今日はどうしたの? 」とまで言われるようになりました。袴姿で三脚を担いだこともあり、パンプスよりも草履のほうが早く走れる(はず!)。

「きもの倶楽部」= https://ameblo.jp/kimonokurabu/

Facebook= https://www.facebook.com/KimonoClubMaruko/

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